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早期に積極的な抜歯を行った方が顎骨壊死発症を予防できることが示された 長崎大

長崎大学は10月18日、抜歯を避けることが一般的とされている顎骨壊死の予防において、実際には抜歯自体は顎骨壊死のリスク因子にはならず、むしろ抜歯を避けることが顎骨壊死発症率を有意に増加させることを明らかにしました。 

骨吸収抑制薬は、がんの骨転移や多発性骨髄腫に対して広く使われているが、重篤な副作用として顎骨壊死の発症が問題となっている。

 顎骨壊死とは、口腔内常在菌などによる感染が起こり、顎骨の組織や細胞が局所的に死滅し、顎骨が腐ることである。痛みや腫れ、排膿だけでなく、病的骨折や咀嚼不全、ときには敗血症をもたらす可能性がある。

 顎骨壊死は、抗菌薬投与などの保存的治療で治癒することはまれで、手術による壊死骨の切除を要する場合がほとんどである。このことは、がん治療で苦しんでいる患者にとって大きな負担となっている。

 この顎骨壊死の治療や予防について、米国の口腔顎顔面学会や日本の口腔外科学会などによる複数のポジションペーパーでは、顎骨壊死発症リスクを高める要因として抜歯が挙げられている。そのため、現時点では、骨吸収抑制薬を投与されている患者に対して抜歯を行わないことが、国内外を問わず一般的となっている。

 しかし、抜歯を避けることで顎骨壊死の発症を予防できるとする研究結果はこれまでに報告されておらず、むしろ日本国内の顎骨壊死の患者数は年々急増してきた。

これまでは、顎骨壊死発症を予防するために、できるだけ抜歯を避けることが一般的な方針とされてきた。

 しかし、今回の研究結果から、骨吸収抑制薬を投与されているがん患者が歯周病や根尖病巣などの感染源になりうる歯を持つ場合、早期に積極的な抜歯を行った方が顎骨壊死発症を予防できることが示された。そしてこのことは、これまでにポジションペーパーで推奨されてきた予防策を180度転換させるものである。

 同グループではこれまで、抜歯前に骨吸収抑制薬の休薬は必要ないこと2、3)や、顎骨壊死の手術前にも骨吸収抑制薬の休薬は不要であること4)なども明らかにしてきた。

 今回の研究により、骨吸収抑制薬が投与されている患者の顎骨壊死発症リスクを軽減するためには、抜歯を含む積極的な歯科治療が重要であることが示唆された。

 また、骨吸収抑制薬が投与されている患者でも、休薬することなく、必要ながん治療と歯科治療の両方を受けられることが明らかとなった。





30代以上の血糖コントロール不良が下顎大臼歯の損失に影響

滋賀医科大学とサンスター株式会社は、30代以上で血糖コントロールが悪い人ほど歯数が少なく、高血糖と喫煙により歯の喪失リスクが高まることを明らかにした。

今回の結果により、糖尿病と診断、もしくは健康診断で糖尿病予備軍と指摘された場合、早期に歯科検診を受けることの必要性が明らかになった。また血糖値が高い人が歯周病やう蝕の予防と治療を十分に行うことの重要性も示唆された。

20歳から74歳までの男女約23万人を解析

30代以上の各年代で、HbA1cや空腹時血糖値が高い群ほど歯数が少ないという連続的な関係性が示された。

HbA1c高値群(HbA1c 7.0%以上)は、低値群(HbA1c 7.0%未満)と比べて多くの部位の歯を失っていた。その中でも、下顎大臼歯を失った人の割合に大きな差があることが判明しました。

今回の研究によって、糖尿病だけでなく、血糖値が上がりはじめた糖尿病予備群の人においても、歯周病やう蝕に対して積極的な予防と治療を行い、歯の喪失を防ぐことの重要性が示唆された。

口腔細菌が大腸がんの発生に関与している可能性を発見 鹿児島大

鹿児島大学は9月21日、口腔細菌が大腸がんの発生に関与している可能性を発見したと発表した。

今回の研究によって、4種類の口腔常在菌が大腸がんに関与していることが判明。これは世界で初めての発見という。

今回、大腸がんに関与している可能性が示されたPeptostreptococcus属とStreptococcus属は通性嫌気性のグラム陽性レンサ球菌、Solobacterium属は偏性嫌気性のグラム陽性桿菌である。

 Peptostreptococcus属やStreptococcus属といったレンサ球菌属は、初期プラークの形成に関わり、歯肉縁上プラークに多くみられるSolobacterium属においては、酸素のある環境では生育できない偏性嫌気性であるため、他の菌種よりも病原性は高くなると考えられる。

歯肉縁上における炎症のコントロールを行う口腔ケアこそが、大腸がんの発生や進行にとって重要であると考えられる。

白板症から重層扁平上皮がんに発展した症例

患 者:55歳 女性    
初 診:2014年4月
主 訴:舌のできものが気になる
既往歴:特記事項なし
生活歴:タバコおよびアルコールなどの嗜好はなし
現病歴:2014年1月から左側舌縁に白斑を自覚し、近在歯科医院を受診する。舌白板症が疑われたため精査加療をすすめられ、4月下旬に当科初診となった


写真1 初診時の口腔内写真

55歳の女性。左側舌縁に均一な白斑を認める。局所に圧痛、硬結等の症状はなし。

 

 

近医からの情報提供

患者は左側舌縁の白斑を主訴に来院。本人に痛みや痒みなどの自覚症状はなく、増大傾向もないという。

 

近医からの紹介状(イメージ)

 

 

現症:

全身所見:栄養・体格中等度、全身状態良好。
口腔外所見:顔貌は左右対称、頸部に異常なリンパ節腫大は触知しなかった。
口腔内所見:左側舌縁に15×20mm大の表面粘膜は滑沢かつ均一な白斑を認めた。口腔の他部位に白色病変は認められなかった。同部に圧痛と硬結はなく、舌の運動障害、嚥下障害も認めなかった。狭窄歯列、咬癖、ブラキシズムなどの外傷要因も認めなかった(写真1)。
臨床検査所見:炎症所見はなく、他に特記すべき所見も認めなかった。
蛍光観察所見:白斑部に相当して均一かつ境界明瞭な蛍光亢進が観察される。白斑前方部に均一かつ境界明瞭な蛍光ロスがあり、白色光下の舌乳頭委縮部と一致している(写真2)。


写真2 初診時の蛍光写真(イルミスキャンⅡを使用)
白斑部に一致して強い緑色を呈し蛍光亢進がある。前方には一部蛍光ロスがあり、乳頭の委縮部と一致していた。

 

 

臨床診断:

均一型白板症

 

 

処置および経過:

初診時に細胞診を施行しClass Ⅱの診断を得た。翌月、症状不変のため生検を施行し、病理学的検査では上皮性異形成症を伴わない過角化および有棘層、角質層の著明な角化が観察された。生検結果から悪性所見がないことが確認できたため、患者の希望もあり全切除はせず2〜3ヶ月ごとの経過観察(視診、触診、そして蛍光観察)を継続した。


3年後の2017年4月時の診察では、白斑部の肥厚が観察されるのみであった(写真3)。

写真3 初診から3年後の口腔内写真
   左側舌縁に均一な白斑を認める。白斑の一部に肥厚した部分があるが、局所に圧痛、硬結等の症状はなし。

写真4 初診から3年後の蛍光写真(イルミスキャンⅡを使用)
白斑部に一致して強い緑色を呈し蛍光亢進がある。蛍光亢進内に蛍光ロスが散見され、境界も不明瞭。


蛍光所見では蛍光亢進と蛍光ロスの混在が明確になり(写真4)、亢進の所見も不均一、境界不明瞭になったため蛍光写真の解析を行ったところ、悪性化を疑う所見が観察された(写真5)。

 

写真5 蛍光写真のG値解析ソフトによる比較。緑の輝度(G値)をカラーマッピングして三次元表示すると、初診時はフラットで均一な画像が得られたが、3年後には凹凸不正な画像が得られた(左図の黒点はマーキング)。

 

念のため同日に細胞診を行ったところ、Class Ⅳの結果を得た。肉眼では明確に判断できなかった角化の異常を蛍光観察で描出できたことになる。

 

CT、MRIによる画像検査から明らかな頸部・遠隔転移の所見がないことが確認できたため、同月に全身麻酔下にて切除術を施行した(写真6)。

 

写真6 切除した病変(左が前方、上が舌背)とその病理

 

病理組織学的検査にて、扁平上皮がんの診断が得られた(写真7)。術後3年以上経過したが、再発徴候はなく経過は順調である。

 

写真7 最終の病理報告書

 

まとめ

本症例のように、近在歯科医院から紹介を受けた症例に対して、当科では細胞診を先行し、陰性であれば定期的(2〜3ヶ月ごと)に視診と触診、そして画像記録を行う(写真8)。

  近医から適切な時期に紹介をいただき、フォローを行ったことにより、早期にがん化を発見し、進展を避けることができた。もし紹介を受けていなかったら、進展した舌がんになり、患者は舌部分切除以上の侵襲を余儀なくされていた。患者のQOL低下を未然に防ぐことができた好例といえよう。

 カンジダ症、口腔扁平苔癬、褥瘡などとの鑑別が必要だが、白斑が不均一型、毛状型というときには高次医療機関へ紹介いただくと良い。その際の注意点は白斑の形態と周囲の硬結である。

 

 

細胞診のClass分類

細胞診の判定はパパニコロウ染色という方法が用いられ、以下の5段階で行われる。
Class Ⅰ: 異型細胞が認められない。正常。
Class Ⅱ: 異型細胞は認められるが、悪性の疑いはない。
Class Ⅲ: 異型細胞は認められるが、悪性と断定できない(Ⅲa:おそらく良性異型 Ⅲb:悪性を疑う)
Class Ⅳ:悪性の疑いが濃厚な異型細胞を認める
Class Ⅴ: 悪性と確定できる異型細胞(がんなど)を認める

 

粘膜疾患の蛍光観察

生検や細胞診に代わる、口腔粘膜疾患の新たな診断方法。侵襲が少なく、非接触であることから近年注目を浴びている。緑値の判断には個人差があるが、G値でカラーマッピングすれば一目瞭然である。



 

歯周治療が非アルコール性脂肪性肝炎の病態進行を抑制する 広島大

広島大学は8月19日、歯周炎に対する局所治療が非アルコール性脂肪性肝炎の病態進行の抑制に有効であることを発見したと発表した。

非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis;NASH)とは、アルコールや肝炎ウイルスの感染といった原因がなく、肝臓に脂肪沈着や炎症、線維化といった変化を生じる病気。

高脂肪食誘導脂肪肝マウスモデルにP.gingivalisを歯性感染させると、細菌が肝臓に到達し、肝の炎症性サイトカインの発現や線維化領域、肝線維化と正相関するとされるマクロファージの集簇巣の数が有意に増加した。

上記のマウスに対し、抗菌薬を用いたP.gingivalis歯性感染巣の除去(歯科的治療介入)や内服治療を行ったところ、P.gingivalisが感染した歯周組織の炎症を抑制した。しかしながら、抗生剤内服投与では、根尖歯周組織の炎症は軽減したものの、根管内の感染は持続。歯周炎局所の炎症抑制には、歯周炎局所の治療が必要であることが示された。

また、歯科的治療介入において、肝臓内の炎症性サイトカインの発現、マクロファージの集簇巣の数や線維化を有意に減少させていた。

 

一方、内服治療単独では、肝臓における炎症性サイトカイン発現やマクロファージ数は減少傾向に留まった。このことから、歯周炎によるNASHの病態進行を制御するには、感染源である歯周炎局所の治療が必須であることが示された。

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